漢方腹診シミュレータの体験会を開催しました
2025年3月27日(木)、京都大学医学部において、漢方腹診シミュレータの体験会を開催しました。
漢方医学は医学教育モデル・コア・カリキュラムにも明記されている、全ての医学生が習得すべき重要な内容の一つです。実際、医師免許を取得すれば多くの漢方薬を医療保険の枠組みで処方することが可能となり、本邦の臨床医の8割以上が日常的に漢方薬を処方し、西洋医学と相補的な役割を果たしています。一方、日本漢方医学教育協議会が発足したのは2015年、全国の医学部での使用を想定して作成された標準テキスト『基本がわかる漢方医学講義』が出版されたのは2020年であり、本邦において体系的な漢方医学教育体制が整ってきたのは、比較的最近のことです。そのため現在の指導医層の中で体系的な漢方医学教育を受けてきた者はごくわずかであり、Kyoto NEXT臨床教育ティーチングアシスタントへのアンケート調査でも「漢方医学」は「教えられない」との回答の目立つ項目でした。
Kyoto NEXT事業では次世代型屋根瓦式教育における柱の一つとして特定領域の補完・強化措置を講じていますが、上記の理由から漢方医学教育もこの特定領域の一つと考え、7種類の腹診シミュレータを導入し活用を開始しました。
*腹力モデル(腹力1、腹力3、腹力5)、小腹鞕満モデル、胸脇苦満モデル、心下振水音モデル、桂枝茯苓丸モデル
腹診は江戸時代に発展した日本漢方に特有の診察法であり、「証」を判断するうえで非常に有用ですが、写真や動画では学びにくいという課題があります。また、健常者を対象とした模擬診察や実際の患者を用いた実習では複数の「証」を比較することが困難であるため、習得が難しいとされてきました。こうした背景から、シミュレータの活用が非常に有用と考えられます。今回の体験会では、漢方の専門家である京都大学医学部附属病院漢方ユニットの先生方と、医学教育・国際化推進センターの教員が腹診シミュレータを囲み、効果的な漢方医学教育の推進について意見交換を行いました。また、体験会には、臨床実習入門コースにおいて漢方医学を学んだばかりの4回生や大学院生など複数の学生も参加し、学習者の視点からも貴重な意見が共有されました。

今後もKyoto NEXTでは、腹診シミュレータ等を活用しながら、幅広い世代への標準的漢方医学の普及と、効果的な屋根瓦式教育の推進を支援してまいります。